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和馬は立ち止まって振り返ると、じっと私を見つめて話しを続けた。

「僕はね、そうなってほしくないんだよ。ハルは自分でも気が付かないうちに、自らそういう方向に進んでしまいそうな気がするから」

胸の奥に、細くて長い針を刺されたような痛みが走った。

「……自分から『飯炊き女』になっていくってこと?」

「『飯炊き女』に限らず、ね」

何かを見透かされている?

それはきっと、私も見たくない何か。

でも、もしかしたら……その通りなのかも。

すごく正しい表現をされたような気がする。
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