冬に咲くヒマワリ


「世里菜、東京初めてだよね?」

「うん。」

地図を見ながら、器用にベビーカーを押す世里菜は既に東京に馴染んでいて、置いてきぼりのような気持ちになる。



「な、何で、そんなに普通なの?」

「え、別に…。あ!あった!」

あたしの話なんか聞いていない世里菜は
地図をしまってベビーカーを押して走り出す。


「ちょっとぉ、世里菜ぁ!」

追い掛けて着いたのは
敷金礼金0の不動産屋。


世里菜はとりあえずそこで部屋を見つけて暮らしていくらしい。



やっぱり、世里菜はどこに行っても世里菜だ。

我が道をゆく。



あたしもそうなれたらいいのにな。


なんて思いながら
クーラーの効いた不動産屋さんで手続きを済ませる世里菜を横目に溜め息を吐く。



…恭平に早く会いたい、なぁ。




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