冬に咲くヒマワリ
行きは近いと思ってたはずなのに、帰りはやけに長く感じた。
アスファルトにそびえるビルも、街を急ぐ人の姿も見えないこの町が
やっぱりあたしには合ってる。
あんな人込みの中に居たら、自分さえも見失ってしまうような東京に
きっと、恭平は染められてしまったんだ。
そう思うとまた鼻の奥がツンとして、あたしはそれを紛らわせようと思い切り故郷の空気を吸い込んだ。
まだ少しだけ痛む胸に、気が付かないフリをしながら空港の出口へと足を運ぶ。
そして、ロータリーのタクシー乗り場へと直行した。
電車で帰る気にはなれなくて。
とにかく、少しでも早く帰りたかった。
そして全てを忘れるように眠りたい。
また、明日から笑えるように。
やっと順番の回ってきたタクシーの扉に手をかけた、その時。
「沙映。」