冬に咲くヒマワリ


聞き覚えのある声。


少しだけ低いその声はちょっと掠れてて、好きなところの一つだった。

振り返らなくても、わかる。



あたしの腕を掴む手に
もっと触れて欲しい、と願っていたから。




「すみません、お先にどうぞ。」

そう言った恭平は
あたしの後ろに並んでいた人に、タクシーを譲った。

そのまま何も言わずにあたしの手を引く恭平。



何か言ってやりたいのに言葉が出て来ない。

ただ、色んな事が頭を駆け巡り、恭平の後ろ姿が滲んで見えた。



どうしてここに居るの?

なんて聞くのはきっと愚問だ。



人気のない場所まであたしを連れて行くと
恭平は優しい顔でこちらに向き直った。



「これ。」

そう言った恭平は

「キャリーケース忘れるなんて、バカだな。」

とそれをあたしに渡してくる。




…そう言えば、恭平のマンションの前に置きっぱなしだった。



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