冬に咲くヒマワリ
上手く呼吸が出来ない。
そのせいで途切れ途切れになる言葉を、恭平はただ拾ってくれた。
「…恭平は、あたし、の事…嫌いに、なっちゃったの……?」
そこまで言うと、恭平は顔を上げてポケットから何かを取り出すと
それをあたしの手のひらに置いた。
「嫌いになるはずないだろ?」
優しい笑顔。
その笑顔を見て、あたしは涙に濡れた瞳でそっと手のひらを開く。
震える手のひらには
何もついていない、鍵が置いてあった。
「沙映。」
いつもよりずっと柔らかい声であたしを呼ぶ。
太陽に照らされた恭平の笑顔に、あたしは手の甲で涙を拭いた。
「俺はさ、まだ新人で沙映はまだ学生だし、結婚しよう、とかそんな大それた事は今の俺じゃ言えない。」
だけど、と続けた恭平はあたしの頬に手を伸ばして両手で包み込むと、コツンと自分のおでこをあたしに寄せた。