冬に咲くヒマワリ


「…沙映?何やって…。」

少し先に見える恭平くんの横顔が、驚きながら戸惑ってるようにあたしの瞳に映った。



…沙映?

あたしは立ち上がり、彼に歩み寄る。



「あのね、あたし…、」

彼の隣にちょうどよく並ぶと、道を隔てたマンションの前に立つ女の子と目が合って言葉が止まった。




………?

「…恭平くん、誰?この子。」

ふいに彼を見上げてあたしは尋ねた。

だけど恭平くんにはあたしの声が聞こえなかったのか、答えは返って来ない。



そっと彼のスーツの後ろに手を伸ばす。



「沙映、これは…、」
と言いながら彼女に歩み寄ろうとする恭平くん。



「ねぇ、誰?」

だけどあたしは引き止めた。



そしていつかの俊介との会話を思い出す。


『どうやら、遠距離らしいぜ。地元に居るんだとよ。』




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