開運☆紅水晶
こんなトンデモ物体(?)と出会ってしまったんだ。

そりゃ理解できない部分の1つや2つ、出てくるよね。

もう諦めてしまおう。

『空はどうして青いの?』

『人はどうして生きてるの?』

みたいな問題と同じだと思っておけばいい。

「…で、結局アンタの名前は無いの?」

たははと頭を掻いているヤツに訊くと

「んー、そうですね。

僕自身の、って言うのは無いと思います」

と肯定した。

そのまま見ていると、

「そっかぁ…無いんだ、僕の名前…」

なんて、顔は笑いながらも少し声のトーンが落ちた。

…え、落ち込んでる?

嘘ぉ。

うーん、そっか…

悲しいもんだったのか。

『名前が無い』なんて事体験したことは勿論ないのだけど、なんとなくその響きは寂しく聞こえる。

それに、さっきまであんなに元気ではしゃいでた奴が急に沈んだからだろうか。

なんだかこっちまで張り合う気が失せてしまった。

沈黙が流れる。

…私は、彼の名前を考えてたからなんだけど。

彼は何を思っていただろう。

「…ねえ。」

静寂を裂いて声を掛けると、彼は

「はぁい?」

と間の抜けた返事をした。

私は少しいいよどんでから小さく言う。

「あの、さ。

アンタの名前、ヴィーナってどう?」

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