極上笑顔の上司



「だからぁ、別れたくないのぉっ。」
「うん。無理だって。」

瞳がうるうるっと庇護欲をそそる。
やっぱり、かわいいな。

ここは、サンドイッチが評判のカフェだ。
まぁ、二人の間にはコーヒーしかないけどね。

「海人には、私しかいないと思うの。 
 だって、私のこと、好きでしょ?」
「うん?好きか、嫌いかで言ったら好きだよ。
 でも、もう会わないし
 君を抱くのも、無理だ。」

彼女はぐっと詰まって
手前に置かれているコーヒーに目を落とした。

「・・・あの、綾菜ってやつ?」
「あぁ、やっぱり嫌がらせの電話は君か。」

「っ。だって・・・
 あの女が近づいてきたからっ。」
「いやいや、むしろ僕のほうから近づいたんだよ。
 そもそも、君とは関係はあっても
 いわゆる、『彼氏と彼女』ではないだろう?」

ふぅ。
と、ため息をついてから
コーヒーに口を付ける。

「なんで、あんな地味な女・・・」
「ふぅん。そもそもなんで知ってるんだ?
 僕は、付き合いたい人がいるからもう関係は保てないって
 言っただけだよな?」

「だって、同じ会社ってっ・・」
「それで?調べたの?」
「・・・・えぇ。」
「ふぅん。」


まっすぐ彼女の目を見つめてやる。
ちょっと赤くなって目をそらされた。

いや、そこは別に
口説いているわけじゃないから。



「・・・うん。ねぇ優梨愛。」
「は、はいっ。」

「迷惑。もう、連絡してこないで。」


出来るだけ、甘い声で優しく、突き放した。
< 141 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop