極上笑顔の上司
*
「だからぁ、別れたくないのぉっ。」
「うん。無理だって。」
瞳がうるうるっと庇護欲をそそる。
やっぱり、かわいいな。
ここは、サンドイッチが評判のカフェだ。
まぁ、二人の間にはコーヒーしかないけどね。
「海人には、私しかいないと思うの。
だって、私のこと、好きでしょ?」
「うん?好きか、嫌いかで言ったら好きだよ。
でも、もう会わないし
君を抱くのも、無理だ。」
彼女はぐっと詰まって
手前に置かれているコーヒーに目を落とした。
「・・・あの、綾菜ってやつ?」
「あぁ、やっぱり嫌がらせの電話は君か。」
「っ。だって・・・
あの女が近づいてきたからっ。」
「いやいや、むしろ僕のほうから近づいたんだよ。
そもそも、君とは関係はあっても
いわゆる、『彼氏と彼女』ではないだろう?」
ふぅ。
と、ため息をついてから
コーヒーに口を付ける。
「なんで、あんな地味な女・・・」
「ふぅん。そもそもなんで知ってるんだ?
僕は、付き合いたい人がいるからもう関係は保てないって
言っただけだよな?」
「だって、同じ会社ってっ・・」
「それで?調べたの?」
「・・・・えぇ。」
「ふぅん。」
まっすぐ彼女の目を見つめてやる。
ちょっと赤くなって目をそらされた。
いや、そこは別に
口説いているわけじゃないから。
「・・・うん。ねぇ優梨愛。」
「は、はいっ。」
「迷惑。もう、連絡してこないで。」
出来るだけ、甘い声で優しく、突き放した。