極上笑顔の上司

彼女は「海人ぉ」ってつぶやいて
涙をぎゅぅっと 我慢するように
見つめてくる。

かわいそうにーーー

って思うよな。
彼女、こんな 顔だけよくてへらへらしている
僕に『捨てられ』るなんて。


でも、僕は知ってる
この彼女のかわいい顔の裏側を。




「ほら、もう付きまとうな。
 番号も、消せ。」
「そっそんなっ。」


「消したら、
 こいつらを紹介してやるけど、どうする?
 あと、ここと、ここの ブランドの
 新作発表会の
 招待状もつけよう。」

「っ。海人!
 わかったわ!ありがとうー」

にっこり 

彼女はあっさりと
今まで泣いていた顔をゆるませて

ちょいちょいって 操作して僕の連絡先をあっさり消去。


ほら、な。

彼女のこういう現金な態度が僕は大好きだったんだよな。
わかりやすい。
自分に『プラス』になることにしか興味がない。
僕よりスペックの高い奴がいたら
すぐに 足を開くとこ、とか。

あっさりとした態度に
思わず苦笑。

ぽん、と招待状とその場で 
気の合いそうな友人を紹介してやる。
連絡を付けて、あとは本人にやり取りさせればいいか。


「じゃ、海人も今までありがと。
 頑張ってねー」
「あぁ。じゃぁな?」


にこり、と笑って。
彼女は去って行った。

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