極上笑顔の上司
「ぬ・・・
抜け駆けってなんっすかぁ!
牧瀬さん。
俺、、、真剣に口説いてたんっすよ~?」
えっ?
「口説いてたの?」
「ひどいっ。綾菜さんっ。」
香川君は、軽い調子でえーんとなくふりをした。
「あー、ハイハイ。ごめんね~
口説かれちゃってたぁ。やったーー」
「俺、真剣っすよ?」
香川君は顔を赤くして照れたように笑った。
いやいや、
こんなに酒の匂いさせておいて?
酒の勢いの口説き文句を聞かされて
本気にとるほど若くはないし。
「ダメダメ。
香川なんかに綾菜ちゃんはなびかねぇよ。」
なぁ?
なんて同意を牧瀬さんに求められて焦る。
「えぇ~じゃぁ、牧瀬さんにはなびくんですか?」
「まぁ、少なくとも
食事ぐらいはするよ。なぁ?」
また同意を求められて困る。
牧瀬さん、意地悪だなぁ。
確かに、
牧瀬さんと何回か夕食を食べに行った。
でも、それは残業終わりでタイミングが合ったからで---
「えぇっ。まじっすか。
じゃぁ・・・綾菜さん、俺とも行きましょうよ~。」
「ダメダメ。
香川はあともう少し仕事上げるのが早くなってからだなぁ。」
「なんっすかーそれ。」
香川君は拗ねたように
牧瀬さんに突っかかる。
牧瀬さんったら、香川君を面白そうにからかって・・・
酔っ払いのたわごとをそんなに
からかっちゃって・・・
私はおもわず、
くすっと笑った。