命の足音【短編ver.】
命の足音
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──慶応4年4月中旬。
今日もいつもと変わらない朝を迎えた。一番最初に感じるのは太陽の光。
無造作に開いた障子の向こうには縁側があり、さらにその先の庭には、桜が散った後の新緑の木が生い茂っていた。
布団から少し手を出し、滑らせるように移動すると、ザラザラとした畳の感触。
朝の涼しげな風が肌を撫でる。
太陽は浅葱色の空に浮かび、地面には陽炎が揺らめいている。
あの子が作ってくれた粥を口に含み、しばらくの間噛みしめていれば、ほのかに広がる甘み。
鳥のさえずり、新鮮な空気の匂い。
全身で感じ取れる五感。
──自分はまだ生きている。
新撰組一番組組長として、数年前までは京で名を轟かせていた。
全ては、局長である近藤さんのために。
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