命の足音【短編ver.】



『今は負けている。でもお前の戦力が加われば一発で逆転する。新選組の役に立ちたいのなら死ぬな。今は治すことだけ考えてろ』



“労咳”は、不治の病と言われている。


それなのに土方さんは、そんなこと知るかとでも言うように、僕を説得した。



『お前の力が必要なんだよ』



そして、新選組の象徴である、あの浅葱色の羽織を、僕の布団の上にかけてくれた。


戦場に立てなくとも、心は同じなのだと言ってくれた。


あの時死ななくて良かった……と今は心の底から思っている。




「……総司。何にやけてんだよ」


「……はい?」




記憶を辿っていたら、ぼーっとしてたらしい。


土方さんの眉間に皺が寄っている。まぁいつものことなんだけど。




「んだよ、気持ち悪ぃな。一人で笑いやがって。俺が話しかけても全部無視だ。せっかく来てやったのに何だそれは」


「……土方さんこそ、すぐ怒って気持ち悪い」


「あ?」


「顔真っ赤ですよ?そのくらいで怒ったんですか?僕よりも年上なのに?」



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