命の足音【短編ver.】
その事実にほっとする反面、新選組として戦うことが出来ない自分に悔しさが募る。
ここで戦わないとはいえ、近藤さんはもちろんのこと副長の土方さんも、土地がある限り戦を続けることは目に見えているからだ。
江戸が落ちればさらに北へ。
そこも駄目なら──あの人たちは、きっと蝦夷まで行くだろう。
……しかし、京から江戸まで北上している間に、どれだけたくさんの人が命を落としたのだろうか。
「ねぇ桜」
「なに?」
「ちょっと、頭、貸してくれる?」
「……またー?」
これも、いつものこと。
桜は、お椀を畳の上に置くと、少し顔を赤らめながら僕の手が届く位置に頭を寄せた。
ゆっくりと、布団から手を出し、その髪を撫でる。
そうしたときの桜の微笑んだ顔が、僕は好きだ。