形なき愛を血と称して
「リヒルトさああんっ、羊があぁ!」
絶賛涙目中の叫び声を聞き、リヒルトは猟銃を杖代わりにしながら、その光景を見物した。
「また、餌でも持って行ったのか。それは夕食時の贅沢品だ。草(質素)を食い尽くした羊が群れるのは当然なのにねぇ」
「ごめんなさああぃ!」
このやり取りも、いったい何回目であろうか。こんな馬鹿な真似をする理由も、聞かずとも勝手に脳内で再生される。
曰わく、お友達になりたかったから。
「お友達、お友達ねぇ。恋人たる僕がいれば、他に何か必要なものなんかあるのかな」
「リヒルトさんんん、羊いぃ!」
一匹だけならモフモフ対象だが、百匹以上群れてやってくればかなりの恐怖。怖い怖いと涙を流す彼女を、リヒルトは眺めるだけだった。
「いーよ、トトちゃんの手で殺しても。今晩はラム肉にしようかな」
「リヒルトさんのお友達にそんなこと出来ませんっ」
「僕が何かを見るときは、道具かトトちゃんでしか区別していないから」
「極端すぎです!」