形なき愛を血と称して
そんな様子のトトを見たラズ。
餌(ドッグフード)とトトを交互に見た後。
「クゥン」
そっと、鼻先で餌の器をトトに差し出してみせた。
「ラ、ラズ……!そ、そんな、ラズのご飯なのに、恵んでくれるの!?」
「君はいったい今まで、どんな食事をしてきたの……」
流石にそれは見たくないと、リヒルトがトトを手招く。
ドッグフードを食べようとした顔が上がる。何の警戒心も持たずに近づくトトは、やはり床に座る。
奴隷のように正座し、踏まれたいが言わんがごとく近い距離。
トトにそんな気がなくとも、これでは上の加虐心を煽ってしまうに違いない。
「えっと、ネズミとか、ミミズとかを」
その結果がこれ。人扱いされない女の出来上がりだ。
混血でなければ干からびて死んでいたところだろう。
「君は、あっちの奴らが憎くないの?」
「……、そんな質問、しないで下さい」
トトの精一杯の答えだった。
自分でも馬鹿な質問をしたと自覚する。
憎まない訳がないんだ。けれども、“憎いと思ったら最後、生きていけない”。
憎い奴らによって生かされている以上、反抗するわけにはいかないし、『いつかはきっと』と夢を持ってしまう。
夢を自ら壊さないためにも、憎まずにいた。
血の繋がった家族なら、愛して当たり前なんだからーー