形なき愛を血と称して
「愛されなかったんだね、君も」
えっ、とトトが顔を上げれば鼻先に、ぬめりとした物が滴り落ちて来た。
トトの細い体に鳥肌を立たせるもの。怖気が立つほど本能的に欲してしまう液体。
「くれぐれも、牙は立てないでおくれよ」
だからこそ、ナイフで傷を付けた人差し指でトトの唇に触れる。
「あ、……い、いいんですかっ」
一抹の理性であるのは、リヒルトの手に添えられた細い彼女の指から察せる。強い力で握られた。藁をも掴むとは語弊だが、きっとその様はこういった絵図であろうとリヒルトは思う。
「いいよ。ただし、飲み過ぎないように。止まらないようなら、ラズに頭を食わせるからね」
ぐいっと無理に指を押し込む。
くぐもった声。しかしてすぐに、舌先が踊る音に塗りつぶされた。
爪先から人差し指の付け根まで、満遍なく舐められる。くわえ込んだ口が上下に動いたかと思えば、一番の深みで止まり、血液を吸われていく。
獣の食事。
されどもーー
「顔、上げて。舐めたままでいいから」
必死になって、指に吸いつく様が、撫でたくなるほど可愛らしく思えた。
潤んだ瞳が、命令通りに動く。
今、彼女の中は、自身のことしかないのかと思うと、心臓が大きく高鳴った。
求められている。
無我夢中に、他のことなどーー恥体を晒す己さえも省みず、ただ一心に“僕のことのみを想ってくれている”。
初めてだった。
初めてーー