形なき愛を血と称して
(二)
『牧草地と言ったら、白のワンピースに麦わら帽子よねーっ!』という理由で、真っ先に着せられた服は、思いのほかトトに似合っていた。
白と橙の色合わせは栄える。
麦わら帽子は三月分ほど早いが、室内でも帽子を外さないほどトトが気に入っているようだった。
カウンヘルム家に姿見はない。小さな鏡を机に立て、くるくると回るように自身の姿を見るトト。
「花でも舞っているみたいだねぇ」
そんなトトを見つつも、足を組み椅子に座るリヒルトは裁縫をしていた。
フローリデが買ってきた服は言わずもがな、どれも人間用。人間に羽が生えているわけもなく、羽の収納が出来ないトト専用に改良する必要性があった。
背の部分にチャックをつけての簡易的なものだが、一番効率的なものだろう。
「初めてですっ、こ、こんな、服だなんて!それにそれにっ、まだまだいっぱいあります!」
「五着程度だよ」
「いっぱいあります!」
「はいはい。着たいのは分かったから、もうちょっと待っててねぇ」
針をチクチクと動かすリヒルトの姿に、トトは自分の立ち位置を思い出す。
「ご、ごめんなさいっ、せ、急かすつもりはなくて……ただ、嬉しくて。ほ、本当だったら、主人のリヒルトさんにこんなことさせちゃいけないのに……」
服が汚れること知らずのトトは、リヒルトの足元に。垂れた花をリヒルトは眺める。