形なき愛を血と称して
これが、愛情であるとは自覚した。
足元に置き、愛でていたいという愛情。
これが、歪みであるとも自覚した。
自身の根本をねじ曲げてしまうような愛。
針で指を刺す。
うっかりでは済まされない深さまで、ズブズブと。
「リヒ……っ、何をしているんですかっ」
頭を垂れていたからこそ気付くのが遅れたトトが、慌てて針を持つ右手を制した。
床に落ちた針は、ほとんどが赤に染まっている。
栓なくした穴からは、赤い液体が滲み出ていた。
止め処なく、床にーートトの頬に、落ちる。
「飲みなよ。トトちゃんのために用意した」
血が出る指を、わざとトトの口に落ちるように上げるリヒルト。
トトの瞳孔が開く。呼吸が獣の息づかいとも化す。
「僕の血、極上だろう?」
答えは言葉ではなく、行動で示された。
むしゃぶりつくに相応しい無様な口と舌が、リヒルトの指にまとわりつく。
一心不乱にすするさまは、下手な言葉よりもよほどいい。
「上を向くんだ。僕を見たまま、きちんと飲み込んで」
トトの意識化を自身で占めたいのもあるが、上目で見るとろけきった愛らしい眼も見たい欲求もあった。
欲求は満たされる。満たされすぎるほど、トトはリヒルトのことしか目に入れてなかった。
「足元にいてくれ。そうすれば、ずっとこの血をあげよう。好きなだけ飲んでいいから、僕をーー」