形なき愛を血と称して
『愛してほしい』。
「っ……!」
トトの口が離れる。
どうしたのと聞く前に、トトは部屋の隅まで逃げてしまった。
追いかけてみれば、体を震わせて、俯いている。
「怖かった?」
怯えているのかと思えば、違うと首が何度も主張した。
「い、いやです。ごめんなさいごめんなさいっ。もう、リヒルトさんの血、飲めません……!わ、私、リヒルトさんの血じゃなくて、リヒルトさんが大切なのに、な、何だか、これじゃあーーリヒルトさんの血が目当てでここにいるようで」
嫌だと、宝石のような涙が零れる。
慰めるべきだが、リヒルトは別の点が気にかかった。
「大切?」
「リヒルトさんは、優しくしてくれました。私のこと気持ち悪くないって、服も買ってくれて、痛くない触り方をしてくれて。わた、私、こんな“温かい”の初めてでっ。だ、だから、私、リヒルトさんがーー大切なんです!」
必死な表現は要領を得ない分、感情がよく伝わった。
トトのそれもまた、愛情。
同じ思いのはずが、こうも“違う”のかと、リヒルトは苦笑した。
膝を折る。トトと同じ目線だ。