形なき愛を血と称して
「高いーっ!すごいっ、あ、リヒルトさーん!」
手を振るトト。リヒルトを見て気が抜けたのか。
「あわわわわっ」
バランスを崩した。
駆け出した足が意味を成す。
急降下ではないにしろ、意に沿わぬ着地をしたトトが怪我もなく地に足をつけられたのはリヒルトの腕があったからだろう。
「まったく。飛ぶのも禁止だな」
「ご、ごめんなさい」
抱き止められた腕に、そのまま潜り込むトト。
「でも、発見だ。トトちゃん、僕の血を飲めば飲むほど、吸血鬼らしくいられるみたいだ」
え、とあげられた顔に、微笑み返す。
「トトちゃんは、吸血鬼として在りたいようだから」
混血だからこそ、吸血鬼だとより主張した日を思い出す。
麦わら帽子が風に飛ぶ。
追い掛ける手も届かないほど遠くへ。
「体中、僕の血が巡るように飲み続けるんだよ」
冷たい風が、運んで行くのだった。