形なき愛を血と称して

『我がカウヘンヘルム一族に、永劫たる力を与え給え』

一人でなく、多勢。
現在だけでなく、未来永劫。
カウヘンヘルムの名を持つ者に、力を与えろ。

悪魔よりも強欲な人間の願いでも、オロバスは聞き届けた。

以来、その魔術(召喚術)が廃れることなく現代まであり続けるのは、オロバスの影響あっての賜物。崇め奉っても良い存在であるが。

「オロバスも、君がカウヘンヘルム家の人間でないことは分かっているだろう。これの悲願、カウヘンヘルム家への復讐の手助けをしたのだから、ある程度のことは叶えてくれるよ」

悪魔よりも非道になれる強欲(生物)が、いた。

一人の力を求めれば、一人の命。
そんな公式が周知の状態で、“多”を望むことは間違い。

間違いだからこそ、カウヘンヘルム家は“なかったことにした”。

オロバスを裏切る形でーー

「かうっ、我は、我はあぁ!憎い、にくいにくいっ、ひひひっ、ねがっ、ひとつ、かなえば、我も、ひとつ!」

オロバスの怒りはもっともだった。
先祖が得た力で最初にやったことが、オロバスを殺すこと。

この守護域は元々殺害目的で使われた領域だ。逃げ延びれたからこそ、オロバスは無事であるが、その時代の当主の首を狙っては返り討ちに合うことも少なくない。

最後にオロバスの姿を見たのは先々代だったか、それほど危機にも思っていなかった悪魔だが。

< 63 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop