形なき愛を血と称して

「消えろと、言っただろう」

リヒルトは事も無げに、対処した。

避けることもせず、かといって猟銃で迎撃することもせず、その場に立っていただけだが、『消えろ』の言葉に従うように、象の足が腐り落ちた。

「ぎっ、ひ!」

痛みはないが、あまりの光景にオロバスはたじろぐ。

「人間だからと舐めきる奴らは多い。苛つくねぇ。悪魔も、吸血鬼も。道具と家畜の分際で、誰に手を出している」

引き金に指が置かれた猟銃。
しかして銃口はオロバスにではなく、リヒルトの足元に。

「お前の悲願も、“僕の代で終わる”。ーー終わらせてやろう。使える道具が手元にあるんでな」

犬の亡骸に向かって、引き金は引かれた。


弾け飛ぶ犬の首。
首からは血がどくどくとーー

「なんで、ラズ、を……」

唇を震わせるトトとは対照的に、リヒルトは顔色一つ変えずに、犬の胴体に猟銃を突き刺した。

「器に穴が開けば、中身はどうなる?」

誰に問いているのか、答えるものがいなくとも、リヒルトは猟銃を墓標のように立たせた。

器に穴が開けばーー今まさにラズの肉体からは血が“零れ落ち”て。



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