形なき愛を血と称して
「僕の血を飲んでいる時がーー今まさに、僕の物が君の中を巡っていると思うと、気持ちが高ぶる。指先まで隅々と僕の物を行き渡らせたい。中も、外だって、僕の物で染め上げたい」
首筋を吸われた。マーキングした部分の出来を満足げに見つめながら、つぎはトトの胸元に同じ物をつける。
喘ぐさまを覗き込み、紅潮してきた頬を愛でた。
「サキュバスの血もあるからか。君は簡単に、堕ちるよねぇ」
淫魔に相応しい造りだと、扇情的な体の反応を楽しんだ。
ただーー
「まだ、泣くのか」
シャワーの水とは違う液体が、彼女の顔を濡らしていくのが気に食わなかった。
「満たしてあげているのに、なんで。そんなに僕が嫌だって、嫌いだと言うのか!だったら、どうすれば好きになってくれる!君の好きな血を与え、体に悦楽も教え込み、全てを与えるつもりでいる僕の何が不満だって言うんだ!
もっと傷を作ればいいか?それで離れないなら、いくらでも、もっと!もっともっと!もうこれしか、君からの愛を感じられないっ!愛してくれっ、僕を!君の中に、僕を入れてくれよ!」
絶叫にも近い訴えは、彼の顔も濡らす。
互いの涙が混じり合った。
「君にしか、愛されなかった」
だからこそ、君の愛しか要らない。
そう言った彼は、露わとした自身の首筋を、彼女の唇につけた。
吸血鬼としての象徴。
牙を突き立て、もっとも血を効率に飲める部位を前に、トトの目が大きく見開いた。
吸血鬼としての本能。
生きるために呼吸をするのと同じ。呼吸(やらなければいけないこと)を止めていれば、苦しくなる一方。
「あ、……!」
トトの口が開く。開かれた際に出た熱い吐息を感じたリヒルトは、笑う。
「飲み干しなさい」
全てを。
そう命令されたトトは、その牙を赤く染め上げた。