形なき愛を血と称して
「君に愛されたかった。もっともっとと、際限なくそれを求めた。ーー君から無償の愛を貰っているとも分からずに」
全てを与えずとも、それ以上の物をくれる愛しい人。そんなことも気付かずに、彼女の苦痛になるほどの想いを与え続けてしまった。
懺悔するように、リヒルトは何度も謝罪を口にする。
やがて、その口が塞がれる。
もういいと、真っ赤な目をしたトトを見る。
「私も、あなたに愛されたかった。ーー叶った今、とっても幸せですよ。リヒルトさんは、どうですか?」
安心したよう笑う彼女と、同じ顔をする。
初めて、心が満たされた気がした。
『愛されなかったんだね、君も。
でも、もうそれも終わりだ』
こんなことを思うことはこれっきり。終いの返事が浮かび上がる。
「幸せだよ。君を愛せて」
愛に形を与えることが間違いだった。
血と称して彼女の内に満たさずとも、自身の内のように、彼女もまた、大切な人のことで満たされているはず。
でなければ、こうして笑い合える事も出来ない。
形なき愛を血と称した。
されど、この身の全てを以てしても、彼女の愛には届かない。尽きることも枯れることもしない想いを、彼女はずっと与えてくれているのだからーー