形なき愛を血と称して
ーー
狂った奴が、狂った奇跡を生み出した。
カウヘンヘルム家の生業を聞き、リヒルトが思ったことがそれだった。
カウヘンヘルム家の一人目。当主の代にて魔術という気が触れたとしか言えない分野にのめり込んだ者がいた。
誇大妄想の話で終わらなかったのは、気の触れたことが成功してしまったせい。魚が空を飛ぶほどのファンタジーを目の当たりにしてしまえば、嫌でも受けいれ、次にーーそれを使い何が出来るかを考えてしまう。
誰も真似できないことを手に入れた人が考えることなど、昔も今も変わらない。誰もが想像するであろう。
金儲けに使えないか、と。
いつの時代も金が物を言うのだ。
牧場の経営だけでは贅沢な暮らしは出来ない。余所から人外を呼び寄せて出来る金儲けの方法はないかと、そこからまた、カウヘンヘルム家の探求が始まる。
見せ物、奴隷、権力者への献上物。それなりに成功したことでも、『いや、まだ何か』と飽くなき欲求を持つ人間は、ついにある答えを見つける。