氷結世界と月光姫《つきのひめ》
――――眠りについてからの記憶がない。
眠りについて、今に至る、ってとこだろうか。
わたしはまだ思うように動かない重たい身体をゆっくりとおこし、もう一度、辺りを見回した。
スケートリンクのような氷の地面が果てしなくつづいている。
どんよりと曇る空の隙間からわずかに差し込む光に反射し、キラキラと幻想的だ。
氷に薄くかぶさる雪はふわふわと軽そうで、まるでわたあめのよう。
こんなの、ファンタジーの世界でしかありえない世界だ。
それくらい綺麗で、美しくて。
わたしはほぅっ、とため息をついた。
ため息は、寒さで白く染まり、すぅっと空気にとけていく。
これ……ここが、本当に地球なの?
(人は、いない……か)
氷河期到来という、自然の驚異には、人間は太刀打ちできなかったのだろう。
この世界は、静かすぎるほどに静かだ。
(みんな、死んだ…………?)
家族は? 友達は?
そう考えると、とても怖くなって、わたしはブンブンと頭を降った。
嫌な考えを、無理矢理振り払うように。