氷結世界と月光姫《つきのひめ》
「あ、あの~、その人まだ眠ってたんじゃあ……?」

「……んん~、おはよ~」


そういいかけた時。

蹴られた男の人がのんびりとした仕草で起き上がり、あくびをしながら、ううんとのびをした。


「やあ、キミも起きたんだね?」


男の人はわたしに気がつき、微笑んだ。
優しそうなおっとりとした仕草に、ふわりとゆるむ表情。

氷の世界にいるのに、男の人は、まるで日溜まりでまどろむ猫のよう。


「えー…っと…?」

「ああ、こいつはね、あなたが起きる前に起きてたのよ。いわゆる二度寝よ」

「あ、そうだったんですね!」


起きてから、もう一回寝たということか…。
それで、起きていたときにわたしの顔だけ見たってことね。

二度寝…?このくそ寒い中で…?

(それもすごいわ…)



ていうかさっきの蹴りはヤバイよ。

何気なく、ふと足元に目をやると、


(えっ、ヒールのくつじゃん!?)


え?さっきの人はヒールで蹴られたの!?
なのになんであんなににこやかなの!?


(ていうか、イケメンさんだ……)

なんでここって美男美女そろっちゃってるの?

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