氷結世界と月光姫《つきのひめ》
「ほんと、女の子みたい……」
「ん…………だれが、……」
…………。
!?!?!?
男の人は、2、3度まばたきをし、そしてゆっくりと目を開けた。
ばちっとまじりあう視線。
…………え? いつから、起きて……
わたしが固まっている間にも、彼はそのはちみつ色の瞳でじっと見つめてくる。
(ちょっと…!そんな見られたらヤバイんですが!?)
完全にフリーズしたわたしを無視して、彼は上半身をおこそうとゆっくり身体をかたむけ、
「って、ぴゃああああああああっっ!?」
「うるっせー……。こっちは寝起きなんだけど」
そりゃあなたは、寝起きだからぼうっとして気づかないんだろうけど!!!
顔が近いよ。
うん、かなり近いよ?
あなた様のきれいなお顔が目の前にあるんですけど……っ。
わたしはささっと後退する。それはもう、素晴らしく早い動きで。
…したつもりが、雪に足をとられ、
ツルンッ…………ゴチッ
勢いよくすべって、思い切り頭を地面にぶつけてしまう。
そう、硬い氷の地面に、勢いよく――
「っっっ、たぁあああいっ!」
頭に走る、固いもので打ち付けたときの痛み。
フィギュアスケートで転けた選手の痛みが、ちょっとわかったような気がした。
イケメンに見つめられてドキドキしたショックより、こっちの方が大ショックだ…!
ガスッ
「ぐほぁっ」
尚も頭を押さえつつ転がり回るわたしに、強烈な一撃がお見舞いされた。
お腹に鋭い痛みが走り、わたしはぴたりと動きをとめる。
まるで、だれかに蹴られたような痛みが鈍く脇腹に残っていた。
見上げるとそこには、わたしに気づかれないよう、さっと足を戻したリアさんの姿。
なるほど…そういうことでしたか。
リアさん…あなた美人なんだから、何かあったらすぐ蹴るの、やめたほうがいいとおもいますよ?