氷結世界と月光姫《つきのひめ》
「おまえらも……適格者か?」
わざと低くしたような、いかにも警戒している声。
気づけば、さっきの美少年が、怪訝な目をしてわたしたちを見ていた。
「ええ……そうよ」
リアさんが急に、すっと目を細めた。
まるで、相手を試すように。
な、なんだか、女ボスみたいな迫力が……。
「あなたも適格者? この計画の肯定派かしら?」
「そうじゃないといったら?」
「危険因子は排除するのみよ」
なんだかよくわからない会話をするふたり。
わたしは、なんでこんなにも空気が緊迫しているのかがわからなくて、ポカンとしている。
するとヒロトさんが、さりげなく、なれた手つきでわたしを後ろに追いやった。
……わぉ。ドラマで見るヒーローじゃん。
女の子をさっと自分の後ろに追いやって、守るみたいな?
とにかく、わたしはヒロトさんの後ろから顔をのぞかせ、リアさんたちを見ていた。
なんだか、バチバチと火花が散っているよう。
混じり合う視線は完璧ににらみ合いのものだし、両者から危険な雰囲気が漂っている。
それから少しの間、二人は険悪な雰囲気のままにらみ合いを続け、
ふぅ、と、男の人が息をつく音が聞こえた。
「残念だけど…………俺は肯定派だよ」
そういいながらも、彼はぜんぜん残念そうじゃない。
「…そう。それなら安心。否定派の奴だったら殺さなきゃならなかったから」
そういうリアさんも、心から安心したと言う感じではない。うーん…日本語って難しい。
「…さっきので、君の実力はおおよそ計れた。下手に刺激はしないようにするよ」
「…それは、あたしの実力を認めたと受け取っていいのかしらね?
…あたしは莉愛。あなたと同じく肯定派よ。
そこの男は大翔、そっちの女の子は優奈…あなたの名前は?」
「…………岬輝(みさき)。よろしく」