空の彼方
相馬先生はうーんと唸りながら考えている。
「だめだ。お前が無理して出る試合じゃない。
この状態を変えたい気持ちは分かる。
だけど、それはお前の選手生命を懸けてまでやることじゃないだろ。
……だめだ。大人しくベンチで応援してろ」
それでも「お願いします!」と望月くんは諦めずに相馬先生に頼み続けている。
「何度言われても変わらない。
これで二度とバスケができなくなったらどうするんだよ!」
相馬先生は試合中にも関わらず制をするように怒鳴った。
「……俺はそれでもいいです。
俺は心からそう言えるくらい今までバスケの練習を積んできました。
もうこわいものなんて何もありません。
中学の時、あんな散々な結果で終わったのにスカウトの問い合わせが来てもそれを押し切って西ヶ丘に来たことも悔いはありません。
俺は……もう一度、早瀬のおかげでバスケができたんですから
もう十分です!」
清々しい彼の表情は凛としていてとってもかっこよく見えた。
迷いのない望月くんの言葉に相馬先生はこう言った。
「……分かった。お前に最後のクォーターを任せるよ。
残りの時間でちゃんと膝を固定して、準備万端な状態にできたらな」
「はい!ありがとうございます!」
その言葉を聞いた瞬間、望月くんの表情は初めて練習試合に出る時みたいに自信で満ちている顔をしていて
きっと望月くんがどうにかできると信じたいと思えた。
「吉井、望月と交代だ」と相馬先生の指示が耳に入ってくる中で「早瀬!」と望月くんに呼ばれた。
「ん?どうしたの?」
「控室に行って俺のバッグからサポーターを持ってきてほしいんだけど」