【短編】紅蓮=その愛のかたち
ネクタイをシャツを切り裂く。
金の縁取りのある写真立ても投げつけた。
デコラティブな飾りのついた写真立ては、ベッドをクッションにして、想像以上に遠くまで弾んだ。
そして、ベッドサイドに掛けられていた大鏡に当たって落ちた。
かつては、二人の愛し合う姿を余すところなく映し出した鏡は大きく割れ、ヒビの入った鏡は、醜くゆがんだナホミの顔を万華鏡のようにうつし出している。
咄嗟に駆け寄り、破片を拾い上げようと伸ばしたナホミの指先に鋭い痛みが走った。
ほどなく真っ赤な血があふれ出てきた。
泣いて泣いて泣いて、枯れるほど泣いて。
体中の体液は残っていないのではないかと思っていたのに、指先から血液はとめどなく湧き上がってくる。
いつだったか、彼の為に料理をしようと台所に立った時、なれない包丁で指先を切ってしまったことがあった。
「痛い」と小さく叫んだナホミのところに驚くようなす早さで指先を口に含み、血を吸い上げてくれたのが思い出される。
彼の唇の柔らかさにエロティックな欲情を呼び覚まされ、そのまま愛し合った。
そんな時もあった筈なのに。
金の縁取りのある写真立ても投げつけた。
デコラティブな飾りのついた写真立ては、ベッドをクッションにして、想像以上に遠くまで弾んだ。
そして、ベッドサイドに掛けられていた大鏡に当たって落ちた。
かつては、二人の愛し合う姿を余すところなく映し出した鏡は大きく割れ、ヒビの入った鏡は、醜くゆがんだナホミの顔を万華鏡のようにうつし出している。
咄嗟に駆け寄り、破片を拾い上げようと伸ばしたナホミの指先に鋭い痛みが走った。
ほどなく真っ赤な血があふれ出てきた。
泣いて泣いて泣いて、枯れるほど泣いて。
体中の体液は残っていないのではないかと思っていたのに、指先から血液はとめどなく湧き上がってくる。
いつだったか、彼の為に料理をしようと台所に立った時、なれない包丁で指先を切ってしまったことがあった。
「痛い」と小さく叫んだナホミのところに驚くようなす早さで指先を口に含み、血を吸い上げてくれたのが思い出される。
彼の唇の柔らかさにエロティックな欲情を呼び覚まされ、そのまま愛し合った。
そんな時もあった筈なのに。