Special to me
『随分長いことベンチに座っているけど・・・いや、防犯カメラにあなたの姿が映っていて、今、車椅子対応を終えてまだいたら、声を掛けようかと思っていたんですよ。具合、悪いのですか?』

「いえ、大丈夫です。ご心配お掛けしました」

私はその場を立ち去ろうとした。

『ちょっと待ってください』

曽我さんの声に私は立ち止まった。

『少し、お話ししませんか?』
「え?」

『僕は仕事中ですけど、米原と違って助役はシフトには入りませんから、何かイレギュラー対応が起こらない限りはあなたと話すくらいの時間はあります。今からなら終電1本前までならホームに行く用事はないので、ぜひ、お茶でも飲んで行ってください』

曽我さんの言葉に甘えて、私は事務室奥の休憩室に通された。

緑茶の入った湯のみがテーブルに置かれた。

『どうぞ。あと、これも』

と、1枚の紙が渡された。

見ると、2月のシフト表。

『米原から、貰ってないでしょう?』
「はい。でもどうして分かったんですか?」
『米原とは長い付き合いでね。彼の心の変化は、大体分かる』

穏やかに話す曽我さんは、30代半ばくらいだろうか。
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