Special to me
『お前の悩みを、救ってくれるといいけどな』
「どういう意味ですか?」
『行けば分かるよ。事務室入り口脇で待ってる』

券売機のセットを見届け終えた俺は、事務室のドアを開けて外へ出た。

そこにいたのは、

「純、さん、ですか?」
『お忙しいところ、ごめんね』

頭を下げた純さんは、真子の次兄。

「こちらこそ、僕を訪ねていただけるなんて、光栄です」
『あの、僕に、今度、晃樹くんとの時間が欲しくて、今日は、そのアポイントで来たんだ』

そう言う純さんは、グレーのダッフルコートに肩から斜めに掛けたショルダーバッグ。

かなりラフな印象。

今は午前11時。

どんなお仕事されている方なのだろう。

『今仕事しているのであれば、明日は非番、だよね』

"非番"とは"明け"のこと。

「はい」
『明日の午後8時、あそこのコーヒーショップでお話するというのはどう?』
「わかりました」

俺は、誠実に話す純さんを見て、悪い話をされることはない。

むしろ、曽我さんの言う通り、救世主になってくれると確信して"では"と去って行った純さんの背中を、それが見えなくなるまで目で追い続けていた。
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