Special to me
『晃樹くんにお詫びの言葉を貰う為に呼び出したんじゃないんだ。今日は、俺の、昔話を聞いてもらいたくて』
「昔話、ですか？」

俺は、純さんからの話に耳を傾けた。

『俺の家って、父親はサラリーマン、母親は専業主婦。ごく普通の家庭だ。俺が中学生の時に宗岡駅に近いあの場所にマンション買って、それまでの賃貸暮らしから引っ越しをしたっていうのも、あまりに典型的すぎて平凡なもんさ』

純さんは、俺の悩みを分かっているのだろうか。

真子と俺の差を縮めようと、自分たちの家は平凡であるということをアピールしているように思えた。

しかし、そんな俺の最初の考えはすごく浅はかで・・・その後の純さんの話を聞いて、俺はちょっとでも"アピールした"と思ってしまった自分に後悔することとなった。

『兄貴は、親の期待を一身に背負って、医学部に現役で入った。平凡なサラリーマン家庭で医学部に子供を入れるというのは、相当経済的に負担が大きいことくらい、高校生の俺にも分かっていた。でも兄貴の夢だから、弟なりに応援してやろうと思って、俺は・・・大学進学そのものを諦めた』

純さんは目の前のブラックコーヒーをひと口飲んで、話を続けた。
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