Special to me
そして、名もなき喫茶店にて2人で話した。

彼女は事件になんて巻き込まれていなかった。

助けて欲しかったのは、自分の立場。

好きでもない人と結婚させられる、と。

彼女の父親は、国会議員。
権力を振りかざして、まるですごろくの駒のように自分は扱われている、と。

―『あのハイジャック事件の時にあなたを見掛けた時、貴方の赤茶色の瞳から、目が離せなくなってしまって』―

"ごめんなさい"と、彼女はその場を離れようとした。

でも純さんは、この出会いを逃してはいけないと、咄嗟に感じた。

そこからは、警察官とテレビ局の記者。

父親の目を盗んでの付き合いが始まった。

なかなか時間が合わない中、恋愛関係になって1年。
純さんの中でふつふつ沸く思い。

それは、

"彼女との身分相違"だった。

自分はサラリーマンの家。
片や彼女は国会議員の娘。

しかも国立最高峰の東都大学法学部の出身。
純さんは普通科の高卒。

付き合いの期間が長ければ長くなるほど、それが痛いほど伝わってきて・・・時間が取れないことを理由に、彼女を避けるようになってきた純さん。
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