Special to me
『環境はちょっと違うけど、晃樹くんは今、俺のそんな心情と全く同じ気持ちを真子に抱いていないか?確かに真子は、栄明学園大卒、出版業界最大手の龍成社の社員。確かにエリートコースだ』

俺の心情、純さんも味わっていたんだ。

『でも、美優紀が俺に対する思いと同じように、真子も晃樹くんに身分不相応なんて思ったこと、一度もないはずだ。むしろ、そう感じている君の心情が、真子には理解できず、自分の中で全く消化できていない。その証拠に、真子のヤツ、会社、休みがちで』

「そんな・・・」

確かに、年明けてから何度かワンマンやホームに入った。

あの時刻にももちろんいた。
そこで彼女を見掛けたのはワンマンで1度だけだった。

俺は、彼女を出社出来ないくらいに追いこんでしまったのか。

『晃樹くん。俺が彼女を避けていた後の話をするよ』
「はい」

俺はすっかり冷めたカフェオレをひと口飲んだ。

『暫く会わなかった間に、彼女は・・・会社を辞めていたよ。"純を苦しめるくらいなら、こんな仕事も地位も学歴も、全部いらない"って。俺の悩みを話していたわけでもないのに、彼女にはバレていたんだよな』

そう言うと純さんは鼻で笑った。
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