Special to me
真子の豚汁はことのほか美味しかった。

他の駅員や助役にも好評だったし、靴を乾かす作業も正直、助かった。

いつもより遅い最終電車が出発した。

この日は、線路の凍結と積雪防止のため、終夜回送運転をする。
そのため、責任者である曽我さんは仮眠を取ることができない。

『付き合いますよ』

と真子が曽我さんに付き合おうとするも、

「それはダメ。お前は帰れ」
『まだやることがあります。私はここにいるので、朝4時に起こしてください』

と、長椅子に寝転んだ真子。

奥の仮眠室から毛布を持ってきて、真子の体にかけてあげた。

「全く、しょうがないなぁ」
『すぐ寝ちゃったみたいだな』
「申し訳ありません」

俺は曽我さんに頭を下げた。

『いや、鉄道員の奥さんにするには、もっとも相応しいタイプだよ』

「逆ですよ。俺のために来たのであれば、これから先、こんな天候不良がある度に、手伝いたい思いに駆られてたら、キリがないじゃないですか」

『普通はね。でも真子ちゃんは違う。今日、駅に手伝いに来たのは、確かに米原がいるから来たことには間違いない。でもさ、それなら、米原だけに奉仕すればいいわけじゃん。靴を乾かすのだって、豚汁を作るのだって』

曽我さんは、寝ている真子を見ながら言う。
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