Special to me
サイドブレーキを引いて、一旦エンジンを止めた。

『俺って、変なプライドがあるみたいで、結婚するからには、自分の力で家族を養ってあげたいとか、妻は家にいて夫の帰りを待ってて欲しいとか、古臭い考えを持っていた。うちは特に親父がきちんと家族を養えていない環境だったから、その気持ちが強かったんだろうな。でもそれは、本当に運命を感じる女性と出会う前の、ただの理想で妄想であったことを、真子が教えてくれた』

そう言うと、私を見て微笑んだ。

『具合悪くなった人を事務室に担いで運んできた時、雪の日の駅での行動、古い話で言えば、あの時計の時だって、全て真子の生まれ持った勇気と根性がそうさせた行動力の賜物。そんな真子を、家に閉じ込めるなんてこと、俺はできない』

「私なら、構わないのに」

本当に構わなかった。
社宅でお隣さんとお茶する生活だって、アリじゃない。

今日は駅に泊まりかぁ・・・帰ってこないんだよな。

その寂しさに耐えられるかどうかはかなり心配だけど。
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