Special to me
「先日は、その考えに及ばず、熟慮せずに、ただ真子さんとのレベルの差の重さだけを感じてしまい、真子さんの思いや僕の9年に及ぶ真子さんを駅から見てきた歴史を、軽んじてしまった自分の稚拙な言動でした。真子さんを傷つけ、悲しませたことには間違いありません」

お母さんも着席し、2人で俺の話を聞いてくれている。

「僕はそんな真子さんを思うと、自分がやったことなのに、苦しくて、苦しくて・・・僕は駅員で真子さんはお客様で、そんな遠い距離をやっと縮められたと思ったのに、このままではまた遠く離れてしまう。そんな状況に耐えられなかったのです。純さんの後押しをいただき、僕は再び、真子さんと向き合って、正直になると決めました」
『純からも少しだけど聞いているよ』

お父さんは優しく俺の話に反応してくれた。

「真子さんにとっての"ただの駅員"ではなく、恋人同士になりたくて僕から声を掛け、僕の恋は実りました。でも僕はもっと欲深くなって、真子さんのすぐ横に立って、一緒に人生を歩みたいと思ったのです。彼女はまだ、若いですし、やりたいこともたくさんあるだろうとは思うのですが、そのやりたいことも、僕はすぐ真横で見つめていたいのです。恋人同士よりも、もっと近い場所で、真子さんにとっての特別な男になりたい。強くそう思っています」

俺は姿勢を正した。

真子もそれに合わせた。
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