Special to me
「西ノ森駅前にある社宅に空きが出ておりまして、そこからなら真子さんの通勤も楽ですし、築年数も浅い建物で綺麗ですからいいと思うのですが・・・来月末までに入居を済ませることを条件に今社内で希望者を募っている状況でして、もうひとつの条件が・・・同居者との入籍を済ませていることなんです」

『なるほどね。結婚もしていないのにその前から社宅は使うなと言うことか。だから、先に入籍を済ませたい、そういうことだよね?晃樹くんと、真子』

「はい」『うん』

俺達はお父さんを見つめて、次の言葉を待った。

沈黙を破ったのは、お母さんだった。

『いいじゃない。社宅って。うちなんて抽選に外れてとうとう入れなかったし。家賃も安いんでしょ?うらやましい話よね』

「はい。家賃は西ノ森駅前に置ける賃貸物件相場の5分の1で、駅から徒歩3分です。ただ、10年という期限はありますけど」

西ノ森駅は、今俺が勤務していて、真子が通勤に使っている宗岡駅より10駅分都心に近い駅。

そこから3駅さらに都心に行った中央南駅で降りて他社の電車に乗り換えて2駅目が龍成社の最寄駅だ。
< 164 / 255 >

この作品をシェア

pagetop