Special to me
「いやいや、僕の力じゃないですよ。やはり宇都宮さんの努力があってこそですから。でも・・・」

『でも?』

「僕のことを、覚えていらっしゃらなかったことは、かなりショックです」

それは素直な気持ちだった。

『ご、ごめんなさい。でも、今から、ずっとお知り合いじゃ、ダメですか?』
「え?」
『これから、私のことをただのお客さんじゃなくて、改札で米原さんが見れば私の名前が分かってもらえる、そんな知り合いになっては、ダメですか?』

不安そうな表情で彼女は俺を見る。

「名前も何も、僕はずっと覚えてましたよ。お忘れなのは宇都宮さんの方ですから」
『そ、そうでしたね。ちょっと言い方間違えました』

言葉を選んでいる様子の彼女。

『あの・・・よろしければ、今度、ゆっくりお話したいです。米原さんと』
「僕と?」

意外なことを言われた。
4つ下の彼女から、誘われるなんて。

こんな展開、俺の心は有頂天だ。
でも、それを表に出すわけにはいかない。

彼女は俺のことをどう思っているか分からないし。

『ですから、携帯の番号、交換しませんか?』
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