Special to me
「あ、あの・・・私もそういう"奥様方"とのお付き合いは、きっちりしておいた方がよろしいのでしょうか」

噂では聞く。

社宅の奥様方には"お局様"とか"奥様会"とか、夫の出世とかどうのこうのって。

『アハハハ。ここにはいわゆる出世狙いの夫を持つ奥さんは誰も住んでいないよ。いわゆる大卒の総合職入社の人たちはここには住んでいないし、ゴマをするような相手はいないからね。でも、普通にコミュニケーションを取るっていう意味では、挨拶くらいはしておいた方がいいんじゃない?』

曽我さんがこの言葉の後、ミートローフを食べて"これ、美味しいね"と千尋さんに話しかけていた。

『引っ越し済んだら、野口さんと、上下の家だけでも挨拶をしておこう』

『あ、ちなみにうちの隣・・・つまり米原さんたちの真上がさっき言ってた内倉さん。内倉さんは・・・菅原駅の助役さん。で、真下の111号室が市東(シトウ)の部屋。あれ、お前同期じゃなかった?』

『そうです。同期で結婚一番乗りだったヤツ・・・奥さんが駅構内の売店の売り子だったんですよ』
『へぇ、そうだったんだ』

そうやって、千尋さんの料理に舌鼓を打ちながら、お祝いの時間は更けて行った。
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