Special to me
「玉って、薬くらいの大きさでしょ?運転している間に、失くしちゃいそう」
『だからそれを防ぐために・・・』

晃樹は隣にあるショーケースを見て"あ、これこれ"と指差した。

『この輪っかみたいなやつ。ここに革の小銭入れみたいな入れ物があるだろ?ここにその玉を入れて、運転士はこれを肩や首に掛けて乗務して、その輪っかごと次の駅の駅員に渡していたらしいよ。ここに、"玉"という名の円盤状の通票があるよ。大きさは500円玉より少し大きいくらいかなぁ』

「いちいち電車が来るごとに駅員がホームにいなきゃならないんだね」

『今じゃそれが全て自動閉塞だから、手渡しだなんて考えられないよね。そうやっていろんな役割を自動化することで、どんどん鉄道員が削減されていったんだ。分かりやすいところでは、自動改札機とか自動券売機もそうだよな』
「ふぅん」
『あ、興味なさそうな返事。鉄道員はどんどんリストラされるって話なのに』

車に戻り、東に向かって走る。

「リストラねぇ。晃樹は大丈夫でしょ」
『どうしてそう思う?』
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