Special to me
『人それぞれの考え方があるよね』

すみれさんは私の話を聞いた後、顎に人差し指を当てた。

『私は旦那の姓に変えてしまったけど、それが正解かどうかは、10年経った今でもよく分からないしね』

"でもさ"と、すみれさんは続ける。

『しょうもないことをひとつ言うと、"宇都宮さん"って、言いづらくて長いよね』

確かに。

宇都宮は長いから、私は長年ずっと、特に男性からは"ウツ"と呼ばれていた。

"米原"に変えれば、確かに言いづらさは解決するけど。

『ま、旦那と相談してみたら、1日だけ届を出すの、待っててあげるから。じゃぁね』

"1日だけ"を強調するように言って、恵美加は自分のフロアへ戻って行った。

晃樹は今日は出番。

だから明日の夜まで会えないので、恵美加の言う1日だけ待ってもらったところで、晃樹と直接話す時間はない。

鉄道員は特殊なんだから、考慮してよ、恵美加。

でも、晃樹には関係のない話。

もちろん相談するのはありだけど、ちゃんと自分の考えを持って晃樹に話をしないと、結論なんて出せっこない。

私は1日、考えまくることにした。
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