Special to me
『結婚指輪、用意してあるんだけど、填める?それとも結婚式まで待つ?』

やっぱり玲奈の言う通りだった。
ジョニー・スミスのホワイト・ローズのマリッジリングだ。

ここで填めるのは簡単だけど、やはり結婚式で晃樹と交換して填めたい。

「あのね、私、けじめをつけたいの」

煮物を食べていた箸を置いて、私は姿勢を正した。

「紙の上では結婚したかも知れないけど、指輪はちゃんとした形で交換したいし、名前もね、今日、結婚式終わるまで旧姓を使うって言って来ちゃった」
『うん。良くできた俺の奥さんだ』

晃樹はローテーブル越しに私の頭を撫でてくれた。

「でもね、ここに引っ越してくるからには、その・・・晃樹の奥さんらしいことをちゃんとしたいな」
『真子が思う"奥さんらしいこと"って何?』

うーん。

あらためてそれを聞かれると、なかなか明確な答えが見つからない。

「料理を作るとか、掃除、洗濯、ちゃんとやるとか」
『そんなの、どっちがやったっていいじゃん。奥さんがやる決まりなの?それとも、俺に真子のパンツを洗ってもらうのが恥ずかしいとか?』

晃樹はそう言って笑った。
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