Special to me
コーヒーショップは駅を出た目の前。
会話を交わすことなく、それぞれ飲み物を買って空いていた4人用のテーブルに座った。

「話は、何?」
『コウちゃんと私の結婚話』
「は?」

何を言っちゃってるんだ?

俺が結婚式を挙げることを知って、俺に会いに来たんだろうが。

『3年前の時、あなたが一方的に私との入籍を辞退したわけでしょ?それ相当の慰謝料でも請求しないと割に合わないと思って』

「何を今更」
『私はね、結婚を破棄された側なの。あなたが今更と言う資格はないはずよ』

彼女は、何が目的なのだろう。

もしあの時の俺の対応に不満があるのなら、この3年の間にアクションを起こすべきだ。

『私、あれから散々な目に遭っているの。コウちゃんと結婚するからってパン屋辞めていたから無職だし、お父さんが田舎暮らししたいって言うから私まで連れて行かれて、おかげて周りが田んぼと野山しかない場所に引っ越すことになっちゃって』

無職はともかく、田舎暮らしになったことは俺には関係ないと思うんだけどな。

「言いたいことはそれだけ?」

俺は勝手な自己主張ばかりする佳世に、早くも辟易していた。
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