Special to me
『奥さんって、コウちゃんはもう結婚しているの?』

なるほど。
結婚式をするという情報は入っても、俺と真子が入籍したことまでは伝わってなかったか。

「そうだよ。あの時と同じ理由でね。社宅に入ることを今度は俺が望んだ」

佳世は、ため息をついて、俯いた。

『どうしてなの?コウちゃんを前向きにさせたものって、何?』
「俺は、君にプロポーズはおろか、好きだの愛してるだのを伝えたことがあった?」
『私の誕生日に花束くれたのは、あなたでしょ?それに私は言ったわよ"あなたと結婚したい"って』
「君の行動は俺のことが好きでやったようには思えないけど。愛情のかけらもない」

そんなやりとりを、俺の右隣に座った千尋さんが帽子を取って静かに聞いている。

『私が、何したって言うのよ』
「婚姻届も最初は勝手に出そうとしていたことも、知っているんだぞ」
『それは、あなたが行動をなかなか起こしてくれないから、代わりにやってあげようとしただけよ』

佳世は勝手に俺の名前を書いて捺印をし、役所に持っていった。

そこで初めて、戸籍謄本が必要なことを知り、佳世は俺の本籍地の役所で必要書類を貰い、俺の委任状を勝手に作成して謄本の写しを貰う申請をした。
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