Special to me
『あなたは罪を犯しているの。有印私文書偽造罪。結果的に受理はされなかったけど、晃樹くん本人の署名捺印がされていない婚姻届を作成しただけでも、刑法第223条に基づいて十分刑事罰に相当するわ』

さすが弁護士。

掘り下げ方が普通の人と訳が違う。

『それに、日本国憲法第24条にも抵触しているしね。婚姻は、両性の合意のもとに成立するもの。だから晃樹くんに結婚の意思がないにもかかわらず意思があるように見せかけたわけだから。もし役所の人が委任状の不正に気が付かなければそのまま婚姻届も受理されてしまい、本来成立してはいけない婚姻を認めることになる。これは公正証書原本不実記載罪に問われて、これは実際逮捕例もあるわよ』

佳世は下から見上げるような目で千尋さんを見た。

『あなた、何者?』

憮然とした声色で佳世は千尋さんに尋ねる。

『申し遅れました』

千尋さんはハンドバッグから名刺入れを出した。

『私は、ここで弁護士をしております。曽我千尋と申します。そこの駅で働いている助役の曽我の妻です』
『曽我さんの、お、奥さんで、弁護士?』
< 212 / 255 >

この作品をシェア

pagetop