Special to me
佳世は宗岡駅では有名人だったので、当然曽我さんのことも知っている。

『あら、私何かおかしなこと言ったかしら?今はご覧のとおり産休中でただの鉄道員の妻ですけど、ウフフ』

千尋さんはそう言うと、手に持っていたアイスティをひと口飲んだ。

『あなたの行動が正しいかどうか、それは法律がジャッジしてくれるわ』

『・・・』

千尋さんの法律家としての言葉に、すっかり閉口してしまった佳世。

すると、

『佳世!』

店の入り口付近から声がした。
佳世が振り向き、俺も声の方向に目を向けると、そこにいたのは・・・

「牛窪?」

牛窪学(ウシクボマナブ)。

あの時、パン屋の合コンを企画した張本人で俺の同期。

今は、別の駅で勤務をしている。

『ここで、米原に会っているって聞いて、飛んできたんだ。佳世に会いたくて』
『私に?他に女沢山作りながら私に"好き""愛してる"を繰り返すあなたに、私は心を許す気はないよ』

佳世は冷たく言い放つ。

実はあの合コンで、牛窪は佳世狙いだった。
ところが、牛窪のやんちゃな性格が佳世にそっぽを向かせ、矛先が俺に向いた。
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