Special to me
帰りの電車の中で、千尋さんに言われた。

『人との出会うきっかけはそれぞれ偶然なんだろうけど、そこに運命の赤い糸が存在しているのってごくわずかなんだろうな。晃樹くんは真子ちゃんと出会ったのは早かったけど、運命の糸はすごく長くてそれを手繰り寄せるには、長い年月がかかってさらにさっきの彼女のようなトラップがあったわけだ。良かったね、途中で糸が切れなくて』

運命の糸か。
よく聞くけど、ベタで空虚な表現だと思っていた。

でも、今ならその糸があったんだということを実感できる。

結果論だけどね。

夜、仕事から帰ってきた真子に今日の出来事を話した。

真子は、

『女の執念だね。それに晃樹は結婚という形で巻き込まれそうになったんだ。怖いね。私だったら、最初に"好き"と言われたその人に行くけどなぁ。だって晃樹の彼女だった人は、同期のその人のことが元々は好きだったわけでしょ?それなら尚更だよね』

ボタンの掛け違い。

佳世も新たな愛を受け入れて、成長するだろう。
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